フィールドサービスはBtoB、BtoC問わず、どのような製品でも必要不可欠なサービスです。
しかし、現在フィールドサービスを展開する企業のなかには、生産性の低さや業務の非効率さが浮き彫りになっているところがあり、早急な改善が求められています。
この記事では、フィールドサービスを改善するためにできるDX化の概要とそのメリットを紹介します。
フィールドサービスを改善したいという企業の担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
フィールドサービスにおけるDX化とは
目次
DX化とは、タブレットをはじめとするIT機器やCRM(顧客管理システム)を取り入れることで、企業の生産性向上や業務効率化を図ることを指します。
現在、日本は少子高齢化に伴い、年々若年層の人たちが少なくなってきている状況にあります。
したがって、これまで人手不足に悩まされていなかった多くの企業でも、新たな労働力を得られなくなるという問題が浮き彫りになってきているのです。
フィールドサービスもその例外ではなく、労働力不足が表面化してきており、少ない人手でこれまでと同じ量の業務をこなさなくてはならなくなっています。
なお、フィールドサービスとは、ガス・水道など生活インフラやPC・家電など消費者が所有する製品、そして産業用機械などあらゆるものに対して行われる保守・点検のことです。
この状況を打破するためには、早期に生産性を向上すること、そして業務を効率化することが重要なのですが、そのために必要となることこそがDX化なのです。
現状、フィールドサービスを展開している企業のなかにはDX化を進めているところもあります。
しかし、DX化を実施していない企業や実施しているものの上手くいっていない企業が多いこともまた事実です。
フィールドサービスが抱える諸問題を解決するためには、DX化の実施が急務となります。
なお、 これらの課題についてはこちらの「フィールドサービスの現場が抱える5つの課題」でも詳しく解説しております。
フィールドサービスをDX化することの6つのメリット
この記事をご覧になっている方は、フィールドサービスのDX化を検討されている企業の担当者様が多いことでしょう。
そこで、ここからはフィールドサービスをDX化することによって得られるメリットを6つ紹介します。
メリット①依頼を受けてから現場へ到着するまでのスピードが上がる
DX化を果たすと、顧客の依頼を受けてから現場へ到着するまでの時間が従来よりも早くなるでしょう。
フィールドサービスの案件によっては緊急性を要する内容のものもあるため、依頼を受けた際には一刻も早く作業員を現場に送り込まなくてはなりません。
このとき依頼を受ける窓口となるのは事務員で、事務員は在籍する作業員のスケジュールを見てからどの作業員に担当させるかを決めています。
しかし、作業員のスケジュールをリアルタイムで確認できるシステムが確立されていない現場では、依頼が来てからアサインするまでに時間がかかるという課題があります。
このような状況においては、CRMを活用したDX化が有効です。
CRMとは、顧客の年齢や性別などの基本ステータスをはじめとし、製品の購買データやこれまでのメンテナンスの実施記録などの閲覧や編集ができる顧客管理システムです。
CRMを用いると、作業員のリアルタイムのスケジュールや、顧客の最新のステータスを常に確認できるようになります。
そのため、事務員は作業員を従来よりも早くアサインできるようになり、現場へ到着するまでのスピードも向上します。
その結果、より多くの顧客に、サービス品質に満足してもらえるようになるでしょう。
メリット②顧客のリアルタイムの情報を把握できる
顧客のこれまでの修理情報や扱っている製品情報などを、いつどこからでもリアルタイムに把握できるようになることもDX化のメリットの1つです。
企業のなかには、社内のパソコンのネットワーク上でしか顧客情報を閲覧できないところもあります。
その場合、現場へ赴く際には、社内で顧客情報が記載されたものをわざわざプリントアウトしなくてはなりません。
また、現場での作業内容を記録するときにも、現場にて手書きでメモしたものを社内に持ち帰ってパソコンに記録し直すという非効率さもあります。
CRMを活用してDX化を行えば、こういった非効率性を改善することも可能です。
CRMを導入することにより、顧客情報をいつどこからでもチェックできるようになるため、客先へ出向く前に顧客情報をわざわざプリントアウトする必要性もなくなります。
加えて、作業が終わったあとには、CRMの管理画面上にて作業内容を書き起こせるので、これまでの二度手間を解消できるようになるでしょう。
メリット③顧客の潜在ニーズを把握できる
CRMを活用したフィールドサービスのDX化により、顧客の潜在的なニーズを把握できるようにもなるでしょう。
CRMは顧客の年齢や性別などの基本的な情報から、過去の依頼内容やサポート内容まであらゆる情報を管理できるシステムです。
過去から現在に至るまでの顧客一人ひとりの情報が網羅的に蓄積されているため、これらの情報はマーケティングに応用することが可能です。
顧客データを属性ごとに分類し、サポートを依頼する周期や依頼内容ごとにかかった時間、そしてBtoCの製品においては消費者の購買志向などの傾向を洗い出します。
このマーケティング活動によって、顧客がどのタイミングでどのような悩みを持ちやすいのかといった潜在ニーズを掴めるようになるのです。
たとえば、製品の機動性が落ちやすい時期を把握できると、その製品を利用している顧客に対しては、こちらから買い替えなどの提案をできるようになります。
こうしたマーケティング活動に役立てられることもCRMによるDX化のメリットだといえます。
メリット④作業スピードが上がる
フィールドサービスをDX化するメリットは、現場での作業スピードや効率が上がるという点にもあります。
作業員が現場に赴く際は、顧客情報が記載された資料や作業マニュアルを持ち運ぶのですが、フィールドサービスの現場においてはそのほとんどが紙媒体です。
かつ、持ち運ぶ資料の量も多い傾向にあります。
作業員は膨大な量の資料を持ち運ぶので、荷物がかさばったり、資料が必要なときに探し当てるまでの時間がかかったりするという問題点が指摘されます。
こういった問題を解決するためにはタブレットを導入して資料をペーパーレス化するという方法が有効です。
タブレットがあれば、顧客情報も作業マニュアルもすべて一元管理できるようになります。
さらに、膨大な資料のデータをタブレットで一元管理できるため、作業員は持ち運ぶ荷物の量が減り身体的な負担を軽減できます。
したがって、タブレットを導入することで現場での作業効率の改善が期待できるでしょう。
メリット⑤設備の健康状態を遠隔で把握できる
特に製造業などの現場においては、設備をIoT化することで遠隔でも設備の健康状態を把握できるようになります。
IoTとは、ひと言で表現すると、設備や機器などがインターネットにつながることです。
設備や機器がインターネットと接続することにより、離れた場所からでも対象の物の健康状態を把握できたり、コントロールできたりするのです。
たとえば、ITチップが搭載されたクーラーならば、スマホと連動させることで遠隔からでもクーラーを起動させられ、自宅に帰る前に部屋を涼しくしておくことができます。
製造業におけるフィールドサービスで設備をIoT化すると、設備の不具合や故障の前兆などを遠隔で把握できるようになります。
もし、設備に不具合が見つかりメンテナンスが必要だと判断したときには、故障する前に作業員を現場に派遣させてメンテナンスを実施しておくといった具合です。
従来のフィールドサービスでは、設備が故障したあとに現場に駆け付け対応していました。
製造業の現場においては、設備が故障して稼働時間が短くなると大きな損害につながることも少なくはありません。
設備をIoT化して故障を未然に防げる環境を整えておくことで、顧客が円滑に事業に取り組めるようサポートできます。
メリット⑥一度に複数の現場に指導できる
DX化を取り入れたフィールドサービスの現場では、現場監督が一度に複数の現場に指導できるようになります。
フィールドサービスの現場においては、1つの現場につき1人の監督が付くという体制が基本です。
しかし、人員が少ない企業においては、監督が現場から次の現場へ赴く回数が多くなりがちです。
そのため、監督に身体的な負担が強いられているという問題も少なくありません。
そういった問題を解決できるDX戦略にスマートグラスの導入という方法があります。
スマートグラスとは、グラス越しにテキストや画像を表示させられる眼鏡型のデバイスです。
通常の眼鏡のようにかけられるので、作業員はハンズフリーで作業できます。
スマートグラスをかけた作業員は、グラス越しに見ている映像を離れた場所にいる人に共有することが可能です。
そのため、監督は現場に赴かずに社内にいても、現場の作業員に対してリアルタイムに指示を送り出すことができるようになるのです。
そして、監督は社内で複数の現場の様子を見られるため、1つの現場だけではなく複数の現場を同時に指導できるようになります。
したがって、人員が少ないという課題を持つ現場に対しては、スマートグラスを導入することによるDX化が有効だといえるでしょう。
フィールドサービスをDX化するにあたっての2つの障壁
フィールドサービスをDX化すると、企業の生産性向上や業務効率化につながるといったメリットがあります。
また、それだけではなく顧客に提供できるサービスの品質が上がることで、顧客からの満足度も高まることも期待できます。
とはいえども、企業のなかにはDX化を進めようという議論が挙がっても、なかなか進展しないというところも多いです。
ここからは、企業がDX化を進めるうえで障壁となっていることを2つ解説します。
障壁①従業員の反発を招く可能性がある
フィールドサービスをDX化するうえで障壁となっていることの1つに、従業員の反発を招く可能性があることが挙げられます。
フィールドサービスを展開する企業のなかには「現状の働き方を変えたくない」「ITツールを使うことに自信がない」といった考えを持つ従業員がいることも少なくありません。
事実、DX化という変化をもたらしたことで業務がかえって非効率的になってしまったというケースも過去にはあります。
その要因には、導入したITツールやシステムがその企業に合っていなかったということが1つ考えられます。
あるいは、既存の働き方が十分機能していたということも考えられるでしょう。
また、ITツールを使うことに自信がないという声が挙がっている企業においては、従業員の年齢層が高いことが考えられます。
たしかに、このような企業では無理にDX化を進めないほうが、従業員の混乱を招くことがないかもしれません。
DX化を進めるかどうかは、いかに従業員が混乱せずにITツールやシステムを使いこなせるようになれるかが1つの判断材料になるでしょう。
ITツールやシステムの導入にあたっては従業員と話し合いをし、導入することのメリット・デメリットをしっかりと説明することが重要です。
障壁②コストがかかる
コストがかかることも、フィールドサービスをDX化するうえでの障壁となります。
DX化を実施する手段にはタブレットやスマートグラスなどITツールの導入、そしてCRMのようなITシステムの導入が挙げられます。
しかし、これらを導入するにあたってはそれなりのコストが必要で、ある程度資金が潤沢な企業ではないと導入は叶いません。
特に、資金が潤沢でない企業がDX化を進める際には、DX化に伴って発生するコストと将来のリターンなどを予測できる範囲で正確に計算したほうがよいでしょう。
綿密な計算をもとに、DX化を進めるかどうかを決めることが重要です。
フィールドサービスをDX化すると労働力不足という問題に立ち向かえる
いかがでしたでしょうか。
フィールドサービスでDX化を実施するにあたっては、タブレットやスマートグラス、CRMといったITツール・システムを導入することになります。
DX化することでサービスの提供者である企業は、現場での作業スピードや効率が上がることが期待できるでしょう。
また、それだけではなく、顧客に品質のよいサービスが提供される結果、顧客の満足度も上がることが考えられます。
ただし、DX化は働き方に変化をもたらし、かつそれなりのコストもかかるので慎重に実施の有無を判断したほうがよいでしょう。
株式会社シーエスワンは法人向けのITソリューションを提供している企業です。
DX化を進めたい企業様は、ぜひご相談ください。