医療機器メーカー・サービス会社にとって、保守履歴管理の適正化は法令遵守と業務効率化の両面で欠かせない課題です。本記事では、現場が直面する保守管理の課題を整理し、FSM(フィールドサービス管理)システムを活用した実践的な解決策とCSOneの導入事例をご紹介します。
フィールドサービスDXコンサルタント
製造業・設備保守業のアフターサービス部門のDX推進を専門とし、FSMシステムの導入支援・業務設計に多数携わる。CSOne公式コンテンツの執筆・監修を担当。
🔍この記事のポイント
- 医療機器の保守点検記録は薬機法・医療法で保存義務あり(廃棄まで・最低3年)
- 紙・Excel管理は属人化・点検漏れ・法令違反リスクが高い
- FSMシステムで保守履歴を一元管理すれば自動アラートで点検漏れゼロへ
- 医療機器業界でのCSOne導入で、現場の効率化と法令対応を同時に実現できる
医療機器メンテナンスに課せられた法的義務とは
目次
医療機器のメンテナンス業務において、最も重要視されるべきは法令遵守です。医療機器は人命に直接関わるため、その安全性と性能を維持するための保守管理は法律によって厳格に定められています。「保守管理」とは、機器が本来の性能を維持し、安全に使用できる状態を保つための点検、修理、部品交換などの一連の活動を指します。
薬機法が定める「特定保守管理医療機器」の義務
医薬品医療機器等法(薬機法)第2条第8項では、医療機器の中でも特に保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とするものを「特定保守管理医療機器」として定義しています。これには、人工呼吸器、除細動器、麻酔器、超音波診断装置など、万が一の故障や不具合が患者の生命や健康に重大な影響を及ぼす可能性のある機器が含まれます。
特定保守管理医療機器を取り扱う製造販売業者、販売業者、貸与業者には、適切な保守点検の実施とその記録の保存が義務付けられています。特に重要なのが「保守点検記録の保存義務」です。この記録は、原則としてその医療機器が廃棄されるまでの期間、適切に保管されなければなりません。記録には点検日、点検内容、修理履歴、交換部品の明細などが含まれ、これらが欠落することは法令違反に直結します。
医療法が医療機関に求める保守点検体制
医療機器を使用する医療機関側に対しても、医療法およびその施行規則によって厳しい管理体制が求められています。すべての病院や診療所は「医療機器安全管理責任者」を配置し、院内の医療機器を対象とした保守管理計画書を策定・整備した上で、計画に基づく保守点検を実施しなければなりません。
具体的には、日常的な使用前後の点検(日常点検)と、一定期間ごとに行う詳細な点検(定期点検)を実施し、その結果を文書として記録・保存することが求められます。自院で保守を行えない場合は、適切な知識と設備を持つメーカーや修理業者へ外部委託することも可能ですが、その際も委託先の選定基準を明確にし、実施された保守作業の記録を医療機関側でも管理・共有する義務があります。つまり、サービスを提供するメーカー側は、医療機関がこの義務を果たせるよう、正確かつ迅速に作業報告書や点検記録を提供する必要があるのです。
保守記録の未整備が招くリスク
もし保守履歴管理がずさんであれば、多大なリスクを負うことになります。最大の懸念は、医療事故が発生した際の原因究明が不可能になることです。適切な保守が行われていたことを証明できなければ、製造物責任や管理責任を問われる可能性が高まります。
また、厚生労働省や都道府県による立入検査(医療監視)において、保守点検記録の不備は厳しく指摘される事項です。記録の未整備が発覚すれば、是正勧告や業務停止命令といった行政処分の対象となり、企業の社会的信用を失墜させかねません。何より、不適切な管理によって機器の不具合が見過ごされれば、患者の安全を脅かすという取り返しのつかない事態を招きます。確実な記録管理は、コンプライアンスのためだけでなく、医療の安全を守るための最重要責務なのです。
現場が抱える保守履歴管理の3つの課題
多くの医療機器メーカーやメンテナンス会社では、依然として紙の帳票やExcelファイルを用いたアナログな管理手法が主流です。しかし、管理すべき機器の台数が増え、法規制が複雑化する中で、従来の手法には限界が生じています。現場担当者が日々直面している、保守履歴管理の3つの主要な課題について解説します。
課題① 紙・Excelによる属人化リスク
「あの機器の修理履歴は担当のAさんしか知らない」「過去の点検記録がどのフォルダにあるか分からない」といった属人化の問題は、多くの現場で発生しています。Excelで修理履歴管理を行っている場合、ファイルが拠点ごとに分散したり、複数の担当者が同時に編集することでバージョン管理ができなくなったりするトラブルが絶えません。
また、担当者が退職や異動をする際、個人のPC内や記憶のみに頼っていた情報は引き継がれず、保守履歴が途絶えてしまうリスクがあります。紙の記録においては、手書き文字の判読困難や入力ミスが発生しやすく、データの信頼性が損なわれることもあります。複数拠点にまたがって数千台、数万台の機器を管理する場合、Excelや紙での一元管理は事実上不可能であり、情報の分断が患者安全へのリスクに直結してしまいます。こうした問題を根本から解消するには、修理・点検・クレームを含む対応履歴を一元管理できる専用の管理ツール(対応履歴管理ツール)への移行が必要です。
課題② 法令対応・監査対応への不安
前述の通り、医療機器の保守記録には長期的な保存義務があります。しかし、紙ベースの記録が倉庫の段ボールに散在していたり、Excelファイルが各担当者のPCに点在していたりする状態では、薬機法が求める保存義務を確実に満たせているとは言えません。
特に監査や立入検査の際、「〇〇病院にある人工呼吸器(シリアル番号××)の過去3年分の点検記録を今すぐ出してください」と求められた場合、即座に対応できるでしょうか。記録を探すのに何時間もかかったり、一部が紛失していたりすれば、管理体制の不備を指摘されます。また、法改正や通知の変更があった際、古い様式のまま記録を続けてしまうコンプライアンス違反のリスクも、システム化されていない現場では高くなります。
課題③ 保守コスト・点検スケジュール管理の非効率
定期点検のスケジュール管理をExcelやカレンダーソフトの手入力で行っていると、点検時期の見逃しが発生しやすくなります。点検漏れは機器の故障リスクを高めるだけでなく、故障後の緊急修理対応という高コストな業務を誘発します。計画的なメンテナンスを行っていれば消耗品の交換で済んだものが、故障によって高額な部品交換や代替機の手配が必要になれば、サービス収益を圧迫します。
さらに、エンジニアのスケジュールが最適化されていないことも課題です。点検対象の機器がどの地域に分布しているかを考慮せず、場当たり的に担当を割り振っていると、移動時間や交通費の無駄が生じます。部品交換履歴が一元管理されていないため、次にいつ部品交換が必要かを予測できず、効率的な予防保全(予防メンテナンス)の提案ができないことも、収益機会の損失につながっています。
紙・Excel管理 vs FSMシステム 比較一覧
| 比較項目 | 紙・Excel管理 | FSMシステム(CSOne等) |
|---|---|---|
| 保守履歴の一元管理 | ❌ 担当者・拠点ごとに分散 | ✅ クラウドで全社・全機器を一元化 |
| 点検漏れリスク | ❌ 手動管理のため見逃しが発生 | ✅ 自動アラートで点検漏れゼロ |
| 法令対応・監査対応 | ❌ 記録が散在し即時提出が困難 | ✅ 数秒で該当機器の全履歴を抽出 |
| 担当者交代時の引き継ぎ | ❌ 属人化により情報が途絶えるリスク | ✅ クラウドに全履歴が保存・引き継ぎ不要 |
| 現場入力・報告書作成 | ❌ 紙で記録後に事務所でデジタル入力 | ✅ スマホで現場入力・即時クラウド同期 |
| スケジュール最適化 | ❌ 手動調整で移動コストが増大 | ✅ 自動ディスパッチで移動距離61%削減 |
| 予防保全の実施 | ❌ 履歴データがなく傾向分析が不可 | ✅ 蓄積データから故障予兆を検知 |
FSMシステムが医療機器保守をどう変えるか
こうした課題を解決する切り札として注目されているのが、FSM(フィールドサービス管理:Field Service Management)システムです。FSMとは、保守点検や修理など、現場(フィールド)で行われるサービス業務全般を効率的に管理するためのシステムのことです。医療機器メンテナンスにおいても、FSMの導入は業務プロセスを劇的に改善します。
保守履歴の一元管理・デジタル化
FSMシステムを導入する最大のメリットは、機器ごとのライフサイクル情報をクラウド上で一元管理できる点です。機器の納入から、日常点検、定期点検、突発的な修理対応、部品交換に至るまで、すべての履歴が自動的に蓄積されます。
現場のエンジニアは、スマートフォンやタブレットのアプリから点検結果を入力するだけで、即座にクラウドへデータを同期できます。これにより、設備履歴簿や保守点検記録表がデジタル化され、オフィスにいる管理者も、外出中のエンジニアも、権限があればいつでもどこからでも最新の情報を参照可能になります。型番、シリアル番号、設置場所、納入日といった機器マスタ情報と紐づけて管理されるため、情報の検索性も飛躍的に向上します。
点検アラート・スケジュール自動化
デジタル化による恩恵は、記録の保存だけにとどまりません。FSMシステムには「保守カレンダー」機能が搭載されており、登録された機器の次回点検日を自動的に計算し、期限が近づくとアラートで通知します。これにより、人為的なミスによる点検漏れを「ゼロ」にすることが可能です。
さらに、点検作業のタスクをエンジニアへ自動的に割り当てる機能や、GPS情報を活用して現在地に近いエンジニアをアサインするスケジュールボード機能も備えています。CSOneのような高度なシステムでは、AIを活用した自動ディスパッチ(配車・要員計画)により、配車やスケジューリングにかかる工数を大幅に削減します。実際にCSOneの導入でディスパッチ工数を95%削減した事例もあり、管理者の負担を大幅に軽減します。
法令対応・トレーサビリティの強化
FSMシステムによる記録管理は、法令対応の強化に直結します。システム上で作成・承認された電子記録は改ざんが困難であり、薬機法や医療法が求める記録の真正性と保存性を確保できます。監査や事故調査の際も、特定のシリアル番号や施設名で検索すれば、該当する機器の全履歴を数秒で抽出・出力することが可能です。
また、担当者が退職や異動をしたとしても、すべての履歴はクラウドシステム上に安全に保管されています。属人化していた情報が組織の資産として蓄積されるため、引き継ぎの手間や情報消失のリスクを完全に排除できます。トレーサビリティ(追跡可能性)が確保されることは、医療機器メーカーとしての信頼性を担保する上で不可欠な要素です。
予防保全によるコスト削減
蓄積された保守履歴データは、次のビジネスチャンスを生み出します。過去の修理履歴や部品交換データを分析することで、「この部品は使用開始から〇ヶ月で故障しやすい」といった傾向を把握し、故障の予兆を検知する予防メンテナンス(予防保全)が可能になります。
故障してからの事後対応ではなく、計画的な部品交換を提案することで、緊急修理の発生を抑制し、修理コストと緊急出動にかかるコストを削減できます。顧客である医療機関にとっても、機器の突発的な稼働停止(ダウンタイム)を防げることは大きなメリットであり、サービス品質の向上によって顧客満足度や契約更新率の改善につながります。
医療機器メーカーがFSM導入で得た実際の効果
導入事例:歯科医療機器メーカーの保守管理改革
実際にFSMシステムを導入して大きな成果を上げている事例として、歯科医療機器メーカーであるIvoclar Vivadent株式会社のケースをご紹介します。
同社では以前、保守点検の記録を紙の帳票で管理しており、記録のファイリングや保管に多大な手間を要していました。また、エンジニアのスケジュール管理はExcelで行われており、各エンジニアの空き状況や移動時間を考慮しながら担当者が手動で調整していたため、業務効率が上がらないという課題がありました。
そこでCSOneを導入し、クラウドシステムでの一元管理に切り替えました。その結果、全機器の保守履歴がリアルタイムで可視化され、情報のブラックボックス化が解消されました。保守カレンダーによる自動アラート機能の活用で点検漏れはゼロになり、自動ディスパッチ機能によってスケジュール作成時間が短縮されたことで、エンジニアが本来の保守業務に注力できる環境が整いました。
CSOneの導入実績データ(業界標準値)によると、以下のような具体的な数値効果が確認されています。
- 作業報告時間:平均7分削減(1件あたり)
- 事務工数:1時間削減(1日あたり)
- ディスパッチ工数:95%削減
- 移動距離:61%削減
- サービス収益:11%UP
- 契約更新率:10%UP
現場エンジニアの業務変化
FSMの導入は、現場で働くエンジニアの業務も大きく変えます。訪問前にスマートフォンで対象機器の保守履歴や前回の修理内容、使用された部品情報を確認できるため、現場での診断がスムーズになります。必要な部品の在庫状況もリアルタイムで確認・確保できるため、「部品がなくて直せない」という理由での再訪問(持ち帰り)を回避できます。
また、作業終了後はその場でタブレットを使ってデジタル報告書を作成し、お客様から電子サインをもらって完了できます。報告書は即座にシステムに登録され、お客様へのメール送信も自動化可能です。これにより、帰社してからの事務作業が不要となり、直行直帰の働き方が実現します。CSOneのようにスマホ1台でこれらすべてが完結するシステムは、エンジニアの負担を軽減し、就業満足度の向上にも寄与しています。
医療機器業界向けFSM選定のポイント
医療機器の保守管理に適したシステムを選ぶ際には、一般的な業務システムとは異なる視点が必要です。選定時に確認すべきポイントを整理しました。
医療業界特有の要件チェックリスト
- 薬機法・医療法に対応した電子記録保存機能を備えているか
- 機器マスタ管理(型番・シリアル番号・設置場所・納入日)が可能か
- 特定保守管理医療機器を一般医療機器と区別して管理できるか
- 定期点検・日常点検・修理履歴を機器ごとに紐付けて管理できるか
- 点検期限の自動アラート機能があるか
- モバイル対応(スマートフォン・タブレット)で現場入力が可能か
- 監査対応時に迅速に履歴データを抽出・出力できるか
- クラウド型でサーバー管理不要か
- 既存システム(基幹システム・ERPなど)とのAPI連携が可能か
- 導入・運用のサポート体制が充実しているか
CSOneが医療機器業界に選ばれる理由
数あるFSMシステムの中で、CSOne(https://csone.biz/)が多くの医療機器メーカーやメンテナンス会社に選ばれているのには理由があります。Ivoclar Vivadent株式会社をはじめとする豊富な導入実績があり、医療業界特有の厳しい要件をクリアしていることが最大の強みです。
CSOneは、保守履歴・修理履歴・部品管理・販売管理を1つのシステムで統合管理できるオールインワン型のクラウドサービス(SaaS)です。スマートフォンやタブレットでの操作性に優れており、ITツールに不慣れな現場スタッフでも直感的に利用できるため、導入のハードルが低い点も評価されています。
さらに、電子サイン機能による完全ペーパーレス化や、AIによる自動ディスパッチ機能など、最新の技術で業務効率化をサポートします。初期費用0円、月額24,000円(3ユーザ)からというリーズナブルな価格設定でスモールスタートが可能な点も魅力です。「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード」において2020年・2023年と2度にわたり基幹業務系ベストイノベーション賞を受賞していることからも、その実力と信頼性がうかがえます。画面項目や帳票レイアウトをノンプログラミングで自由にカスタマイズできるため、自社の運用に合わせた柔軟な設定が可能です。
よくある質問(FAQ)
Q. 医療機器の保守点検記録は、いつまで保存しなければなりませんか?
Q. 現在ExcelやAccessで保守管理をしています。データ移行は可能ですか?
Q. 中小規模の医療機器メーカーでも導入できますか?
まとめ|保守履歴管理のデジタル化が医療機器ビジネスを変える
医療機器メンテナンスにおいて、保守履歴管理のデジタル化はもはや「あれば便利」なものではなく、法令遵守、患者安全、そして業務効率化を実現するための必須要件です。属人化した紙やExcelでの管理から脱却し、FSMシステムを活用することで、点検漏れのリスクをなくし、監査対応への不安を解消できます。さらに、効率的なスケジュール管理と予防保全の実現により、コスト削減と収益向上を同時に達成することが可能です。
CSOneは、医療機器業界での確かな実績と、現場のニーズに応える豊富な機能を備えたFSMシステムです。初期費用0円のクラウド型SaaSであるため、リスクを抑えて導入を検討できます。まずは無料トライアルで、その操作性と効果を体感してみてはいかがでしょうか。







